2018年12月、東川口駅から徒歩約10分の場所にオープンした「トラットリアエストポルトーネ」。2週間に1度訪れる方もいるほど、地域のお客様に愛されるイタリアンレストランだ。オーナーの松原さん、シェフの伊藤さんの2名で運営している。

「いつか一緒に飲食店をやれたら良いね！」と、高校卒業時に語り合った夢。その後、松原さんは塩を専門とする仕事に就き、塩のプロである「ソルトコーディネーター」の資格を取得。一方、伊藤さんは飲食の道へ進み、沖縄料理をはじめ、さまざまな料理を習得した。時を経て、それぞれの「できること」を掛け合わせ、この場所で2人でイタリアンレストランを開くこととなったという。

お客様や地域との関わり

2人はずっと「自分たちにできることを、無理せずできる範囲で、全力で」やってきた。

オープンキッチンが印象的な店内。自然とお客様との会話が広がり、時折趣味の話をすることもあるという。
月に数回、お店のテラスでコーヒーを販売している「JIGEN COFFEE」さんもその例だ。もともとはお店のお客様だったが、話をするうちに、テラスで出店するまでに至ったとか。

また、ご縁があり始めることとなった、自分たちの畑「エストファーム」。しかし、松原さんたちは農業初心者。そこで、お店で使用する野菜も仕入れている「美園野菜」さんからアドバイスをもらったり、お店のお客様の力を借りたりして、現在はお店周辺と岩槻区内の2か所で畑を展開している。地域の方やお客様が参加できる植え付け体験や収穫体験も行っているそうだ。

エストファームで収穫した野菜はもちろんお店で使用。収穫したての、新鮮で生き生きとした野菜。そんな野菜をふんだんに使った料理を見ると、思わず「わー！きれい！」と声が出る。「おいしい！」とお客様に喜んでもらえることが嬉しく、畑を続ける原動力になっているという。

「人と人」として話す中で、自分にできそうなことがあれば、全力で取り組む。そこに見返りを求める心などない。それを、当たり前にしていたら、いつの間にか地域のお客様に支えられ、このお店、お客様、このまちが大好きになっていた。さらに、支えてくれている地域の方々に、恩返しがしたいと思うようになった。

このまちが好き！一緒に盛り上げよう！

「一緒に何かできたら楽しいよね！」
松原さんたちがお客さんとして通っている地域の飲食店と、そんな話をして盛り上がったことから、お互いのこだわりが詰まったコラボメニューを限定提供した。また、最近では、近隣店舗をはじめとする地域の方々と一緒に夏祭りを開催。自分たちの想いに賛同してくれ、応援したいと思える大切な人たちと、大好きなこのまちを盛り上げたい！と、地域との関わりを楽しんでいるようだ。
地域の方々に喜んでもらうのはもちろん、「自分たちもこのまちが好きだから、それぞれが自分たちにできることをしよう！」との想いを強く感じた。

また、松原さんたちはレストランとは別に、2023年4月から「BAMBA 950-2（バンバキューゴーゼロニー）」というレンタルスペースを岩槻区内で運営している。ワークショップやミーティング等自由に使用できるレンタルスペースに加え、菓子製造許可、飲食店営業許可取得済みのキッチンフロアが備わっている。一軒家をまるごとリノベーションする過程で、お店のお客様も手伝ってくれたそうだ。
もともとお店で提供するお菓子を製造する場所として作ったが、「お店をやってみたいけれど、いきなり開業するのは不安...」という地域の方の背中を押す一歩になれば、と貸し出しを始めた。

「私たちは、つなぎ役です。」
自分たちにできることは、場所の提供や人と人をつなぐこと。さらに、自身の経験を伝えることもできる。ただ、その先は、それぞれが各自でつながり、発展していくことが理想だという。自分たちが何もかも関わることはできないが、背中を押すことはできる。そうやって、地域の自立した発展を目指している。また、それにより、いつも支えてくれている地域の方々への恩返しになれば、と話す。

写真右：リノベーションの様子

お店はもうすぐ5周年を迎える。これからも、今あるお客様との関係性を大切にしていきたいという。レンタルスペースの今後については、徐々に利用者が増えていけば...、と話す。今後、どのような方と出会い、どのような楽しい輪が広がっていくのか楽しみだ。きっと今日も明日も、「自分たちにできることを、無理せずできる範囲で、全力で」取り組んでいるのだろう。

最後に...

これからもこの地域で続けていきたい、という松原さんたちの想い。お店やお客様、大好きなこのまちへの大きな感謝。それは一瞬で作れるものではなく、松原さんたちが試行錯誤しながらも、誠実に、自分たちができることを全力でしてきたからなのだろう。そして何より、楽しそうだった。自分たちが理想とするお店の姿に誇りをもって、楽しんでいるように感じた。この地域で、このお店が愛されている理由がわかったような気がする。

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