アップテンポな音楽、色とりどりの衣装に身を包まれた子どもたち。その中心には、司会をしたり、子どもたちと一緒に踊ったりと忙しく動き回る1人の女性。
寒空の下、岩槻で愛されるそば割烹「仁屋」の駐車場では、子どもたちのダンス発表会が行われていた。
こちら、プロダンサーの石田仁奈(いしだにな)さん。
N's Dance Company!!というダンス教室を立ち上げ、地域の子どもたち向けにダンスのインストラクターをしている。
そしてなんと、石田さんには「仁屋」で働く蕎麦屋としての顔も!!
だから「仁屋」の敷地内でダンス発表会をしていたのか。
石田さんの父である石田仁(ひとし)さんが「仁屋」を創業。しかし、高校から始めたダンスに夢中になり、ダンスのインストラクターになるという夢に向かい活動していた石田さんは、当初店を継ぐ意志はなかった。
その後夢が叶い、プロダンサーとしてスポーツクラブやカルチャー教室などでダンスを教えるようになった。さらに自身でダンス教室を立ち上げるなど、着実に自分の道を歩み始めていた時。父が体調を崩し、何とも言えない使命感に駆られた。
「お店をやってみよう。」
そう決心し、ダンスを辞め、「仁屋」で働き始めた。
仕事に少し余裕ができた頃、同級生の子どもや近所の子どもたちに再びダンスを教えてみた。するとSNSでの宣伝は一切せずとも、口コミだけでその評判は広がった。今ではたくさんの生徒を抱えている。
「岩槻が好き!人が好き!子どもが好き!人と関わりたい!」と石田さん。
生まれ育った岩槻が大好きで、地域の人たちと関わりながらお店をやっていきたいという想いがある。
「仁屋」とダンス、両方好きでやりたいこと。そして地域を盛り上げたい。そんな理由で蕎麦屋とダンスのインストラクターの二刀流になったという。
1つ目は、子どもたちへの「機会」提供。
幼稚園や小学生の子どもたちを中心にダンスを教えている石田さん。
子どもが好きなのはもちろんだが、子どもの「人生の選択肢」を少しでも増やしてあげられるきっかけになれば、と語る。
学校や塾、家だけではないコミュニティの場、そしてそこには近所の大人たち。不遇な環境に置かれている子どもたちや、社会に馴染めない子どもたちも含め、より多くの子どもたちに「機会」を与えたい。そのような想いを持って、子どもたちと関わっているという。
2つ目は、「手に届く範囲、目に見える範囲の関係」を大切にすること。
SNSが苦手と話すが、SNSに頼らない理由はそれだけではない。不特定多数の人より、ダンス教室の生徒や近所の子ども、地域の人たちなど、手に届き、目に見える範囲の人たち一人ひとりとの関係を大切にしている。だからこそ信頼が生まれ、口コミで人と人がつながっていくのだ。
実際、石田さんの周りでは人と人とがどんどんつながっていく。
人形のまちで知られる岩槻。以前、石田さんが訪れた人形作り体験では、そこの人形師がダンス教室の生徒の祖父だったことも。また、ダンス発表会を開催するうえで、地元工務店が必要な資材を用意してくれたり、保護者が積極的に協力してくれたりと、地域ぐるみで盛り上がる環境が生まれているという。
「地域を盛り上げたい!」
「地域の人が集まる場所にしたい!」
そんな想いを胸に、今後は「仁屋」のスペースを活用して、子どもたちの宿題のサポートや、地元の人形師や職人を呼んで教室を開いたりしたいという。
「仁屋」は岩槻で愛されて40周年。毎日休みなくお店に顔を出している石田さん。これだけのお店を守り続けるのは大変なことだろう。それなのに疲れた顔ひとつ見せず、むしろ明るく、楽しそうだった。ダンス発表会ではたくさんいる子どもたち、一人ひとりの目を見て名前を呼んでいたことがとても印象的だった。目の前の人を大切にすることで相互に信頼関係が生まれ、人と人とがどんどんつながり、自分の「やりたい!こうしたい!」が実現される。私が石田さんから学んだことは、「謙虚に、楽しく、自分の道を、そして感謝」。
石田さんは、とても惹きつけられる素敵な人だったなぁ。
店名 | 仁屋 |
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住所 | 〒339-0001 埼玉県さいたま市岩槻区大字鹿室959-1 |
電話 | 048-794-2783 |
営業時間 | 月~日 11:30~15:00 月・火・木~日・祝日 17:00~21:00 定休日:なし |
Web | 仁屋(岩槻/そば(蕎麦)) - ぐるなび |