吉田浩之（よしだひろゆき）さん、42歳。
地元岩槻で新規就農し、Chill Out Farmの代表を務めている。

農家に生まれ育ったわけでもない。
最初から農業をやりたいと思っていたわけでもない。

話を聞けば聞くほど、「なぜ？」が止まらない。
吉田さんの生き方や仕事の選択に興味がわいてきた。

「すごく面白そうな人だなぁ！」これが吉田さんへの第一印象だ。

農業を始めた経緯は？

23～24歳の時に音楽関係の仕事に就くため、生まれ育った岩槻を出た。憧れの業界で働くことは狭き門だったためかなり苦労したが、音楽関係の仕事を続けることができた。

「音楽をやめよう！」と思った35歳。

これからの半生何をしようか。企業の内定ももらっていた吉田さんだったが、今までずっと好きなことをやってきたので企業のルールに縛られる働き方に不安を感じていた。

自分が納得して続けられそうなもの...
...農業！！？
「やったことはないけれど、嫌いではないのでやってみよう！」と、軽い気持ちで農業を始めることにした。

新規就農って簡単にできるの？

就農＝農家になるのはそう甘くはない。
まずは勉強。ハローワークが行う農業職業訓練に参加し、4か月で農業の基礎を学んだ。農業学校で勉強もしたが、1人で一から農業を始めるのには厚い壁があった。経験を積もうと農業のアルバイトを探したが、時給も低く...。そんな時、障がい者施設の農作業に関わる正社員の募集を目にし、4年間その施設で働くこととなった。

経験を積み、自分の畑を持ちたいと思った。しかし、農地を買ったり借りたりするには農地法の厳しい要件がある。もともと奥様の実家がある川越で就農しようと思っていたが、農家との関係性がなく、就農は現実的に厳しかった。
そこで吉田さんは自身の地元、岩槻に目をつけた。実家の周りの畑の所有者など、人間関係にも恵まれ、岩槻で畑を借りることができた。

就農を決断して5年、吉田さんが40歳の頃、市が定める認定新規就農者となり、さまざまな支援が受けられるようになったという。こうして今から2年前、Chill Out Farmを立ち上げたのだ。

有機農業にこだわる想いとは？

「我が子に安心して食べさせられる野菜づくりをしたい！」と吉田さん。

音楽関係の仕事をしていた吉田さんは、当時レゲエ音楽を専門としていた。ジャマイカ発祥のレゲエ音楽の一部には、ラスタファリズムという宗教的思想があるという。「神が与えてくれた自然に感謝する」という思想もそのうちの１つ。化学精製されたもの、人工的に作られたものは摂取しない、という彼らの思想に影響を受けた吉田さんは、化学農薬を使わない有機農業にずっと興味があったという。
そんなとき、知り合いだった「ないとう農園」の内藤さんからの誘いで、さいたま市近郊で有機農業を行う若手農家が結成した「さいたま有機都市計画」の農家メンバーになった。20～40代の5人の新規就農者同士で勉強会をしたり、イベントやマルシェを開催したりしている。サポートメンバーも50人ほどいるようで、同世代で支え合っているそうだ。

大人になってから改めて岩槻のまちを見ると、小さいころ近所にあった茅葺屋根の屋敷がなくなり、工場が増えていて、少し寂しい気持ちもあるんだとか。そのような気持ちを抱えながらも岩槻で就農し、「さいたま有機都市計画」の一員として活動している吉田さん。
地元直売所に野菜を置くだけでなく、地元の自然食カフェや、市内各所の「食」にこだわりのある場所やイベントなどにも積極的に参加して野菜を卸している。

化学農薬を使わず丁寧に育った野菜だからこそ、安心して食べられる。そしてそれが地元で採れた野菜だったらなおさらだ。地元岩槻の有機野菜。それは間違いなく岩槻のまちの魅力のひとつとなっているのではないか。

岩槻ねぎ、ルッコラなどのほか、ビーツやバターナッツかぼちゃなど珍しい野菜も。

最後に...

自分が納得して続けられそうなもの＝農業、という発想。そこには吉田さんが大切にしていることがあった。
人と違うことが好きで、みんながやっていないことをしたい、という興味。
自分が感じた「いいな！」を大事にし、そこへ向かう姿勢。
綿密に計画を立てるというよりも、吉田さんは直感やイメージを大切に、自分の感性に従い生きている感じがした。

自分で生き方の選択をし、世の中の常識に縛られない。また、それらを自分の言葉で淡々と語る。吉田さんはとても面白い人だった。もっと話を聞いてみたい！と思った。
Chill Out Farmを始めてまだ2年目。ぜひ応援していきたい！
そして私も、オリジナリティあふれる生き方をしたいなぁ。

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